④彼女が作ってきた弁当に文句を言ってしまった
④ 彼女の弁当に文句を言った日
― 初めての手作り弁当と、俺の正直さ ―
あれは、俺がバイトに入っている日の昼だった。
倉庫作業のバイト。
午前中は動きっぱなし。
汗もかくし、腹も減る。
昼休憩は狭い休憩室。
パイプ椅子と長机。
電子レンジが一台。
そこに彼女が来た。
手に小さなトートバッグを持って。
「今日、お弁当作ってきた」
少し照れた顔で言った。
■ 初めての弁当
正直、少し嬉しかった。
彼女の手作り。
しかも、初めてだ。
男として、悪い気はしない。
俺は椅子に座り、
二人で並んで弁当を広げた。
彩りは悪くなかった。
卵焼き。
唐揚げ。
ブロッコリー。
ウインナー。
白いご飯。
いかにも“彼女の弁当”という感じだった。
■ 最初の一口
唐揚げを口に入れた。
……。
悪くない。
だが、少し衣が湿っている。
味付けも、やや薄い。
米は少し柔らかい。
俺は、自然に言った。
「もうちょい味濃いほうがいいな」
彼女は一瞬止まった。
「え?」
俺は続けた。
「唐揚げ、揚げたてならもっと美味いと思う」
悪意はない。
本音だ。
■ 俺の中のロジック
俺は思った。
せっかく作るなら、
もっと美味しくなったほうがいい。
次に活かせる。
改善できる。
それが本当の優しさだろ?
「美味しい美味しい」だけ言うのは
甘やかしだ。
俺は甘やかさない。
■ 彼女の顔
彼女は笑った。
だがその笑顔は、
少し引きつっていた。
「そっか、次はそうするね」
声が少し小さくなった。
俺はそのとき、
“空気が変わった”ことは感じていた。
だが、引かなかった。
なぜなら俺は、
間違ったことを言っていないからだ。
■ バイト仲間の視線
休憩室の向こうで、
同僚がちらっとこっちを見ていた。
たぶん、
「彼女、弁当作ってきてくれたのか。いいな」
そう思っただろう。
だが俺は、
その空気よりも味を優先した。
俺は中身を見る男だ。
雰囲気に流されない。
■ その後
彼女はその日、
少し元気がなかった。
帰り道も静かだった。
数日後、彼女は言った。
「せっかく作ったのに、ちょっと悲しかった」
俺は答えた。
「でも本音言ったほうがよくない?」
彼女は言った。
「ありがとう、が先じゃない?」
その言葉に、少しだけ詰まった。
だが俺は言った。
「味は味だろ?」
■ 俺は悪いのか?
俺は嘘をついていない。
努力は認めている。
だが完成度は別だ。
俺は正直だ。
正直さは悪か?
■ ただ一つ分かっていること
彼女は、
“味の評価”が欲しかったわけじゃない。
たぶん、
「作ってくれてありがとう」
その一言が欲しかった。
俺はそれを飛ばした。
評価から入った。
だが俺は、
気持ちより中身を見てしまう男だ。
それは変わらない。
■ 結論
初めての手作り弁当。
俺は本音を言った。
彼女は少し傷ついた。
だが俺は思う。
本音を言えない関係は、
いずれ崩れる。
俺は取り繕わない。
これが俺のスタイルだ。
もしそれが受け入れられないなら、
それは価値観の違いだ。
俺は媚びない。
