①クリスマスデート:教会に行ったが牧師さんの話にぶちぎれてその場を去った
クリスマスデート
― 牧師の言葉にぶちぎれ、俺は一人で帰った ―
クリスマスだった。
彼女が言った。
「教会に行ってみたい」
俺は宗教に興味はない。
だがクリスマスだし、
雰囲気もあるし、
まあいいかと思った。
正直、俺は「付き合ってやっている」感覚も少しあった。
■ 牧師の言葉
教会は満員だった。
静かな空気。
キャンドルの灯り。
厳かな音楽。
そして牧師が話し始めた。
「愛とは赦すことです」
「怒りを手放しましょう」
「隣人を無条件に受け入れましょう」
その瞬間、俺の中で何かが弾けた。
ふざけるな。
世の中そんなに甘くない。
理不尽に耐えている人間に向かって、
「赦せ」と簡単に言うな。
怒りを知らない人間の言葉にしか聞こえなかった。
胸の奥が熱くなった。
■ 彼女がトイレに立った
ちょうどそのとき、彼女が小声で言った。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
俺は無言で頷いた。
彼女が席を立った瞬間、
俺の怒りはピークに達していた。
綺麗事を聞き続けるのが、
もう耐えられなかった。
■ 俺はぶちぎれた
心の中で悪態をついた。
「こんな話、聞いてられるか」
俺は立ち上がった。
彼女が戻るのを待たなかった。
説明もしなかった。
教会を出た。
外の冷たい空気が顔に当たった。
それでも怒りは収まらなかった。
俺はスマホを見た。
連絡が来ていた。
「どこにいるの?」
俺は短く返した。
「帰る」
■ デートは終わった
彼女は教会から出てきた。
困った顔をしていた。
「どうして?」
俺は言った。
「綺麗事が無理だった」
彼女は何も言わなかった。
その沈黙の方がきつかった。
だが俺は引かなかった。
俺はそのまま駅に向かった。
彼女を残して。
一人で帰った。
クリスマスの夜に。
■ 家に帰っても怒っていた
電車の中でも怒りは消えなかった。
「俺は間違っていない」
「本音を言っただけだ」
「合わせる必要なんてない」
そう自分に言い聞かせた。
だがスマホは静かだった。
彼女からの追いかける連絡はなかった。
■ 振られた
数日後、メッセージが来た。
「やっぱり価値観が合わないと思う」
それだけだった。
長文でもない。
責める言葉もない。
静かな終了。
俺はあの日、
牧師にキレた。
だが本当に壊したのは、
教会の空気ではなく、
彼女との関係だった。
■ 俺は何に怒っていたのか
牧師に怒っていたのか?
それとも、
「赦せない自分」を突かれたのか?
怒りを手放せない自分を、
見透かされた気がしたのか?
あの場で俺ができたことは、
怒ることではなく、
ただ“隣にいること”だったのかもしれない。
■ 事実
俺はぶちぎれた。
デートを台無しにした。
彼女を一人にした。
そして振られた。
これが事実だ。
逆転戦略は、
正論で勝つことではない。
感情を制御できる男になることかもしれない。
あのクリスマスは、
俺の未熟さをはっきり突きつけた夜だった。
